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ダイアリー・オブ・ザ・デッド

2009年04月28日 00:15

個人的に超敬愛というか崇拝してやまないゾンビ映画界の巨匠、ジョージ・A・ロメロ監督のライフワーク、ゾンビ黙示録シリーズ(と勝手に命名)待望も待望の第5弾。そんなわけでもちろん劇場公開時に観たんですが、DVDがレンタル開始したので再度観ました。うーん、何度観ても考えさせられる!最高!!

このロメロ監督のゾンビ黙示録シリーズとは、1968年に公開されカルト映画として熱狂的ファンを獲得した「ナイド・オブ・リビングデッド」から始まり、1978年の「ゾンビ(原題:Dawn of the Dead)」、1985年の「死霊のえじき(原題:Day of the Dead)」とほぼ10年おきというペースで続き、更に20年という時を経てようやく2005年、待望の第4作目「ランド・オブ・ザ・デッド」が公開された。それにつづく第5作目が本作「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」ということになる。この驚異的な長さの制作ペースから、今作の公開が、ファンにとってどれだけ待望のものだったかということがおわかり頂けるかと思う。(まあ、前作から今作までは3年程のスパンしかなかったけど)
また、現在既に1ジャンルとして確立された「ゾンビ映画」のセオリー、基盤を最初につくったのもロメロである。「ゾンビ」という言葉そのものを一般化させたのもこの人だ。

そんな「ゾンビ映画界」の頂点に君臨する(←大げさ?)監督の最新作。ちょうどつい最近、そのロメロの「死霊のえじき」のリメイクと謳った「デイ・オブ・ザ・デッド」を観たところだった。この「デイ・オブ・ザ・デッド」も、リメイクと言うにはほど遠いとはいえ、B級ホラーとしてそれなりの出来だった。でも、やはり同じ題材「ゾンビ」を扱うにしても、ロメロ作品は格が違う。もう、次元そのものが違うのだ。

過去のゾンビシリーズのタイトルが「ナイト・オブ・リビングデッド」=「ゾンビの夜」→「ドーン・オブ・ザ・デッド」=「ゾンビの夜明け」→「デイ・オブ・ザ・デッド」=「ゾンビの日(?)」→「ランド・オブ・ザ・デッド」=「ゾンビの国(?)」と来ているように、このシリーズは、それぞれのストーリーの直接的なつながりはないものの、被害(死人が蘇る)の規模が徐々に大きくなっていった世界が舞台になっている。1作目で死人が蘇り一軒家に篭城する話、2作目でもっと各地で死人が蘇りショッピングモールに篭城する話、3作目で世界中で死人が蘇り、生存者が地下に篭りゾンビを研究している話、4作目で更に事態が進み、世界中でゾンビがウロついているなか、生存者も頑丈な柵で覆った都市をつくり、ある意味共存している世界を描いている。
つまり、ロメロゾンビ映画の特徴は、そうやって段階を経て、様々なシチュエーションを描きながら、ゾンビ=死者が蘇ることとは何か、もっと言えばその蘇った死者と生きている人間との関係性を、常に鋭く考察していることにある。それゆえ作品には必ず社会的批判を込めた強いメッセージ性があり、その点が他のただの娯楽作品であるゾンビ映画と一線を画している。もはやただのゾンビホラーではなく、社会派作品に近いと言ってもいい。だけどあくまで作品の主体はゾンビ=架空のモンスターで、ホラーというエンタテイメントの体裁は保ちつつ、だからこそその直球とも言えるメッセージが違和感なく浸みとおる。その手腕には脱帽だ。

そんなロメロゾンビ映画のテーマは、常に「人間」。ゾンビという蘇った死者、つまり元は同じ人間だった「もの」と対峙させることで、罪深い人間の業をえぐり出す。今作ではそれに、最近のネットでの個人動画アップロードなどの風潮を含めた「報道」とは何なのかという要素を絡めている。

映画の手法は最近流行りのPOV。「ブレアウィッチプロジェクト」で話題になり、最近何故か「クローバーフィールド」「REC」など、立て続けに同じ手法の作品がつくられている。POVとは、誰かが撮影したという設定の、似非ドキュメンタリータッチの、手持ちカメラで一人称視点の映画のことだ。
「ブレアウィッチ~」も「クローバーフィールド」も「REC」も観たし、それぞれとても面白かったが、今作はそれらのPOVとは一味も二味も違う。まず、撮影者でもある主人公たちが全員大学の映画学科の学生で、そのためある程度撮影の基礎ができていること。また、冒頭にナレーションが入り、これが彼らの手で効果音やBGMなども加えられた、編集済みの作品であるということもわかる。この点は大きい。今までのPOV作品だと、それで、これは結局何なの?という、劇場で観ているこの映画はドキュメンタリーなの?映画なの?という、最後の最後の詰めが曖昧だった。だが、これは冒頭で「作品」であるとはっきり明言しているため、こういうモノがあると最後まで納得できる。最後まで似非「ドキュメンタリ」の体裁が保てているのだ。そして、最大の違いは、POVという設定そのものを作品のテーマと絡ませているということ。この作品ではPOV以外の手法は考えられないし、POVだからこそ、成り立つ作品なのだ。そこが他の作品と格段に違うし、この作品の完成度を大きく上げている。
また、撮影の経験者の撮影という設定や、編集されているという設定のため、通常のブレブレガクガクのPOVより遥かに観やすい。画面酔いしやすい人もこれなら安心だ。

物語は突然死者が蘇り、人を襲い始めるニュース映像から始まる。卒業課題のホラー映画を撮影していた主人公ジェイソンら一行は、何が起こったのかわけがわからないまま、仲間のトレーラーで学校を離れるのだが・・・。
何が起こったかわけがわからないまま、ただ「家に帰りたい」という心境、ゾンビを人だと思いトレーラーで撥ねてしまったときのショック、そういった彼らの心情はとても丁寧に描かれ、POVということも手伝ってあっという間にその世界に観客ははまり込んでしまう。昨今のゾンビ映画は、それが既にジャンル化しているせいもあり、観客側も、つくり手側さえも「死者が蘇り人を襲う」ということを当然のように受け流している作品が殆どなのに対し、その変移の過程をしっかりと描いているのはさすがロメロといった感じ。
そして、その変化をきっちり描くことで、人間のエゴとも言える部分をあからさまにしている。最初はゾンビを撃つことに抵抗があった彼らが、徐々にそれに慣れてゆき、なんとも思わなくなる。残酷だと思われた行為に、徐々に麻痺していく感覚。そしてそれは銃をカメラに置き換え、撮影し、レンズを通して全てを観ることで「傍観者」となることをも痛烈に批判している。英語で「Shoot」は銃を撃つことと撮影すること、両方を意味しているところも興味深い。

今回2度目に観ていて気付いたのは、途中でカメラが2台になり、俗に言う「2カメ」状態になるのだが、主人公で常に撮影し続けるジェイソンを除く1台を、彼らのメンバーの別の1人が撮影することになる。その際に、最初カメラを渡され嫌々だった彼らが、徐々に積極的に撮影するようになるということ。当初撮影を続けるジェイソンに批判的だったメンバーですら、カメラを渡され最後には回し続けるようになる。
これは、カメラの魔力だと思った。嫌なのに押し付けられ、嫌々レンズを覗く。すると、その途端「傍観者」になれる。傍観者は楽だ。目の前で起こっている残酷な出来事も、レンズ越しになら「消費」するだけでいられるのだから。人間の本能とも言えるレベルでの自己防衛なのか、レンズを覗くことそのものに宿る魔力なのか、カメラを渡されたら、覗かずにはいられない・・・。その感覚が、痛いほど伝わってきた。残酷なことに直面するとき、自分の身をどうやって守るのか。それは奥深いところで、カメラを向けることと銃を向けることが繋がっているような気がして、ただ、恐ろしい。だって、カメラを向けることも銃を撃つことも、その相手は「対象」に過ぎないのだから。

そんなわけで、初めて観たとき、その直截的過ぎる台詞の連発などで、一番に感じたのは「自主映画っぽい」だった。もういい年したおじいちゃんで巨匠なロメロが撮ったとは思えない、悪く言えば青臭いような、斬新な何かがたっぷり匂っていた。だけど、やっぱり学生の自主映画では到底つくれないような完成度がこの映画にはある。そのずば抜けたバランス感覚はすさまじい。ゾンビ黙示録5作目にて、処女作のような密度と新鮮さが詰まっている。
もちろん「あの」おじさんとか、あんなところでポロリとか、そして冒頭の「足もげる!」発言など、ニヤリとさせられる演出もいっぱい詰まってます。やっぱ死人は走っちゃいけないよねー。ただのゾンビ映画とかただのPOV映画だと思ってちょっとナメてる人は是非観てください。度肝を抜かれること受けあいのまごうことなき大傑作。
それにしてもジャケットダサすぎてげんなり・・・。ジャケットに惑わされないように!

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