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デビルズ・バックボーン

2009年06月03日 00:24

先日観た「ヘルボーイ ゴールデン・アーミー」に引き続きギレルモ・デル・トロ作品。そういえば観てなかったので。2001年製作のスペイン映画。

1930年代スペイン内戦下、人里離れた荒野に建つ孤児院に、一人の少年がやってきた。彼の名はカルロス。内戦で両親が戦死したのでここへと連れて来られたのだった。到着したその夜から、怪しげな声や人影を見るカルロス。どうやらこの孤児院には幽霊が出るという噂が。そして、彼のあてがわれた12番ベッドをかつて使っていたという、サンティという少年とは・・・。

「パンズ・ラビリンス」と同様、スペイン内戦下を舞台にした、ギレルモ・デル・トロ作品のなかではシビアな系統に入るストーリー。どうやらデル・トロって、「ミミック」や「ヘルボーイ」のような、軽快なアクションに持ち味のビザールさを潜り込ませたエンタメ路線と、今作や「パンズ・ラビリンス」のような、重い現実をファンタジーと融合させた、シリアス路線の二つの路線があるようだ。自分は「パンズ・ラビリンス」で一気にヤラれたクチなので、こういったタッチのほうが好き。なので、大変満足でした。デル・トロ作品のなかでは「パンズ・ラビリンス」に並ぶぐらい好きかも。もちろん「ヘルボーイ」も好きだけどね。

お話は一言で言ってしまえば幽霊ものなのだけど、普通のホラーと思って観ると拍子抜けしてしまうだろう。メイキングで監督自ら語っているとおり、本作はファンタジーであり、そしてそのファンタジーを引き立たせるような重厚な人間ドラマが一番の主軸なのだ。怖いというよりは、悲しい。そんな趣は、後に「パンズ・ラビリンス」を撮る監督の、一貫した主張を伺わせる。「デビルズ・バックボーン」という、いかにもなタイトルに惑わされるなかれ。

ファンタジーとは何なのか、という、「パンズ・ラビリンス」で突きつけられた主張がこの映画にも込められている。過酷な戦時下、しかし、その戦争は大人たちが起こしたもので、子どもたちはいつもその犠牲となり、振り回されている。そんな汚い大人の思惑と、純粋がゆえにそれへと立ち向かう強さを持つ子どもたち。それは、手段や状況こそ違えど「パンズ・ラビリンス」の主人公の少女と同じだ。そして、物語は「パンズ・ラビリンス」とは対称的な終わり方を迎える。まるで対になった物語のように。
デル・トロの凄いところは、その過酷な現実への、ファンタジーという非現実的要素の絡ませ方だ。ファンタジーとは時として明るく楽しいものばかりではない、そしてそのファンタジーを生み出すものも結局は人間であるということ。そして現実を動かすのも、結局は人間の感情以外の何者でもないということ。幽霊は、そこにいるけれども、何かを起こしているのは結局人間なのだ。
そういった大人のエゴが存分に描写され、それと対称的に子どもたちの純粋さが引き立っている。この監督は子どもの描き方が上手いなあとつくづく感じた。そして、その周りを取り巻く大人たちのドラマも奥深い。

全体的に地味なお話だが、それでもデル・トロっぽい美術の秀逸さは健在。まず、何と言っても幽霊の表現がいい。そして、タイトルにもなったホルマリン漬けのアレとか、義足の院長など、不穏さを掻きたてるガジェットも豊富だ。メイキングを観ると、ここでも極力CGを使わずアナログでつくり上げているらしく、デザインまで監督自ら手がけているとのこと。そういったセンスがあればこそ、この重厚なファンタジーにも説得力が生まれているのだろう。

ただのホラーと侮るなかれ。ホラーやファンタジーと綿密に絡み合わせた、現実の過酷さを描く、悲しい人間模様を描くドラマだ。

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ヘルボーイ ゴールデン・アーミー

2009年06月01日 00:33

異界から召還された角の生えた真っ赤な赤ん坊、ヘルボーイ。彼を保護し育てあげたブルーム教授率いるアメリカの極秘組織・超常現象捜査防衛局(B.P.R.D.)のメンバーとして、仲間とともに極秘の任務にあたるヘルボーイの、新たな活躍を描くシリーズ第2作目。

遥か昔、エルフと人間との戦いのなかで、エルフの王の命令でつくられたゴールデン・アーミー(黄金軍団)。しかし、その強大さと冷徹さに、エルフの王は自らゴールデン・アーミーを封印し、それを復活させる力をもつ王冠を3つに分けて、2つはエルフに、1つを人間に預ける。しかし現代、その王冠の1つが何者かによって奪われるという事件が起き、その捜査にヘルボーイや半魚人のエイブ、発火能力を持つリズなどB.P.R.D.のメンバーがあたることになる。

原作はマイク・ミニョーラのアメコミ。ただし、この原作、他のバットマンやスーパーマン、スパイダーマンなどと違って、かなりアート色の強いシリーズだ。タッチはどちらかというと「シン・シティ」に近い。また、ラブクラフトのクトゥルー神話や、その他オカルトの、それもかなりディープな要素をふんだんに含んでいるため、そういった一種マニア向けの趣がある(ちなみに自分はそこまで詳しくありません)。
そんな、キャラクターのビジュアルの突飛さにしてはディープな世界観を持つ本作だが、原作を比較的忠実に映像化した前作と違い、今作は完全にオリジナル作品となっている。そのため、オカルト要素を比較的排除した、どちらかといえばファンタジー寄りの、誰にでも楽しめる一流の娯楽作として仕上がっている。もちろん、原作を読んでいたり前作を観ていたりして、ヘルボーイの世界観をある程度理解していれば、より一層楽しめることは確かだ。

監督は前作に引き続きギレルモ・デル・トロ。「パンズ・ラビリンス」の衝撃もまだ新しい、メキシコ出身の監督だ。ちなみに「パンズ・ラビリンス」は間違いなく傑作なので必見。ゴシック・ビザール調のホラーを得意とする監督だが、その映像の耽美的美しさは他に類を見ない。しかも、しっかりとしたエンタテイメントとして遊びのあるなかで、その映像美を共存させてしまうのだから凄い。
今シリーズも同様で、テンポよく笑いやアクションを織り交ぜつつ、ところどころにハッとするような造形の美しさがある。特にクリーチャーの造形は独特で、何ともいえない不気味さと美しさ、そして愛嬌をそなえ、デル・トロ美のファンならそれだけでお腹いっぱいだろう。トロール市場のシーンなどは、隅々までずっと観ていたいぐらい楽しい。
デル・トロの造形として特筆すべきなのは、あまりCGなどに頼らず、極力特殊メイクでまかなっていることだ。そのため、一昔前の着ぐるみのようなチープさと、生身の人間が演じる生々しさがあり、何とも独特の雰囲気になっている。そもそも主人公のヘルボーイや相方のエイブなど、メインキャラクターが極彩色の特殊メイクバリバリなので、最初観たときは最近珍しいそのチープさに度肝を抜かれるかもしれないが、何故か徐々に慣れていくから不思議だ。ひとつには、全てがそういった雰囲気で統一され隙がないこと、そしてそういった異形のものたちのほうがより人間らしく描かれているからだろう。このへんに、監督の「異形への愛」を感じてならない。(ちなみに「異形への愛」といえばティム・バートンだけど、そっちとはまた違った「異形」感なんだよなー)

また、このシリーズの一番の魅力は、それぞれのキャラクターの強烈な個性だろう。葉巻をくゆらせかっこつけているけど中身は子どもな「子どもおじさん」ヘルボーイと、知的で憎めないエイブ、そしてそんなヘルボーイとの関係を、唯一見た目は普通の人間として育んでゆくリズ。そして、今作から登場する指揮官ヨハン・クラウスのキャラクターもいい。ちなみに自分はヘルボーイ役のロン・パールマンの大ファンなのだけど、この人は本当にハマり役だと思う。体格も顔もそのまんまなんだもの(笑)

最近はアメコミ原作映画のラッシュで、様々なものが映画化され、中には外れもあったりするが、正統派ヒーローものの「スパイダーマン」、リアリティ溢れる暗さでリニューアルされた「バットマン」、これまたリアル系おじさんヒーロー「アイアンマン」、などと比べても、この「ヘルボーイ」はかなり特殊な部類に入るだろう。上記の「スパイダーマン」などのような、いかにもヒーローが大活躍する物語を想像すると、ちょっと拍子抜けしてしまうかもしれない。しかし、どちらかというとファンタジー寄りだと思って、その独特の造形美を堪能すれば満足できることは間違いない。ちなみに、自分はアメコミ原作のヒーローもののなかでは一番好きなシリーズだ。
今作は、オカルト要素を減らしてしまったせいで原作のもつディープな雰囲気がややなくなってしまったのが残念だったが、その代わりデル・トロ節を思う存分堪能できたので大いに満足。それと、ヘルボーイが猫好きな設定のせいで、相変わらず猫がたくさん出てくるのがイチイチ可愛くて嬉しいです(そして驚きの演出も・・・ 笑)。

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