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ハリー・ポッターと謎のプリンス

2009年07月22日 01:18

超有名ファンタジー小説「ハリー・ポッター」シリーズ第6作目の同名映画化作品。ちなみにシリーズは全7作で原作は完結済み、最終章となる7作目「ハリー・ポッターと死の秘宝」は来年2010年秋に前後編に分かれて公開予定。原作は全作既読、過去作品(映画)も全て鑑賞済みなうえでのレビューとなります。

物語はハリーがホグワーツ魔法学校6年生になり、ダンブルドア校長がハリーの元に訪れるところから始まる。ダンブルドアはハリーに頼みごとがあると言うのだが・・・。
それと同時に闇の魔法使いが大っぴらに行動を始め、マグル(普通の人間)の世界にまで侵食してくる。闇の魔法使いたちを束ねるヴォルデモード卿を止める手段は果たしてあるのだろうか。

3作目「アズカバンの囚人」からようやく本筋突入の気配を見せ、4作目「炎のゴブレット」で急展開、5作目「不死鳥の騎士団」でいよいよ物語の大きな流れが動き出した、その続きとなり最終章への布石とも言える、重要なポジションとなる今作。そういった流れから言っても、もはや過去作を観ていない人にはどう考えたってついていけない内容なのは確か。まず、少なくとも前作を、できれば過去作品全てを、さらに望むべくは原作を既読のうえ鑑賞するのをオススメします。

というのも、原作は最終章「死の秘宝」に並ぶボリュームの2冊組みなのに対し、映画は2時間半と長尺なれど1本に収まっている。つまり、相当量のエピソードが割愛されているということ。
原作をかなり最近に読破済みの自分としては、ストーリーが既に頭の中に入っているから、映画を観ながら「ああー、ここは映像になるとこんな感じなんだ」などと楽しむ余裕があったが、果たしてそうでない人にとって意味がわかるのか、若干不安に感じるところがあった。第6作目ともなると、過去作品に張られていた伏線の回収や、その拡大、また、過去に登場したガジェットなどが数多く登場し、その割にはそれらの解説が省かれているため、全てを楽しむためにはそれらを完璧に理解してから鑑賞する必要がある。
だが、今までの映画作品だけでは説明不足なところもあり、結局原作をちゃんと読んでいないと完全には楽しめないつくりになっている。これはどうかと思った。全世界で膨大な売り上げを誇った原作だから仕方がないのかもしれないが、これは「原作を読んだ人があらためて映画を観て楽しむ」映画に他ならない気がした。

もちろん原作は映画と比べても相当面白いし、原作を読んでから映画を観るという楽しみ方は確かにあるので、余裕がある人は原作を是非読んで欲しい。逆に言えば、来年公開される最終章を観る際に、原作を読んでいるのといないのとでは感動が全く違うのは確かだろう。

というわけで、ストーリーには原作つき映画にありがちな、やや強引な展開、説明不足なところが目立つが、グラフィックはかなり美麗。話が進行するにつれ、最初の頃の明るいファンタジーから一転してどんどんダークなタッチへ変わってきたところでの今作は、色調から言って、とにかく暗い。その暗さが現状の不穏さを一層掻きたてダークファンタジーとしての雰囲気は抜群。作中登場する「憂いの篩」の、水のなかに墨を垂らしたような演出もその雰囲気とマッチしていて美しい。
その暗さの中に、ハリーたちホグワーツ生徒の、思春期ならではの学校生活のゴタゴタが、一抹の明るさを醸し出している。ただ、原作だとそれプラス、ハリーの年齢相応の悩みや葛藤がかなり描かれていたところを、長さ上の問題からか削られてしまっているところは相変わらずもったいないところ。

何はともあれ、このシリーズはやっぱり原作を読まないと駄目なんだなーと再認識させられた一作。次回作は映画も前後編ということで、なるべく細かいエピソードが割愛されていないことを望む。

(同シリーズの別の記事)
ハリー・ポッターと賢者の石
ハリー・ポッターと秘密の部屋
ハリー・ポッターとアズカバンの囚人

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ヘルボーイ ゴールデン・アーミー

2009年06月01日 00:33

異界から召還された角の生えた真っ赤な赤ん坊、ヘルボーイ。彼を保護し育てあげたブルーム教授率いるアメリカの極秘組織・超常現象捜査防衛局(B.P.R.D.)のメンバーとして、仲間とともに極秘の任務にあたるヘルボーイの、新たな活躍を描くシリーズ第2作目。

遥か昔、エルフと人間との戦いのなかで、エルフの王の命令でつくられたゴールデン・アーミー(黄金軍団)。しかし、その強大さと冷徹さに、エルフの王は自らゴールデン・アーミーを封印し、それを復活させる力をもつ王冠を3つに分けて、2つはエルフに、1つを人間に預ける。しかし現代、その王冠の1つが何者かによって奪われるという事件が起き、その捜査にヘルボーイや半魚人のエイブ、発火能力を持つリズなどB.P.R.D.のメンバーがあたることになる。

原作はマイク・ミニョーラのアメコミ。ただし、この原作、他のバットマンやスーパーマン、スパイダーマンなどと違って、かなりアート色の強いシリーズだ。タッチはどちらかというと「シン・シティ」に近い。また、ラブクラフトのクトゥルー神話や、その他オカルトの、それもかなりディープな要素をふんだんに含んでいるため、そういった一種マニア向けの趣がある(ちなみに自分はそこまで詳しくありません)。
そんな、キャラクターのビジュアルの突飛さにしてはディープな世界観を持つ本作だが、原作を比較的忠実に映像化した前作と違い、今作は完全にオリジナル作品となっている。そのため、オカルト要素を比較的排除した、どちらかといえばファンタジー寄りの、誰にでも楽しめる一流の娯楽作として仕上がっている。もちろん、原作を読んでいたり前作を観ていたりして、ヘルボーイの世界観をある程度理解していれば、より一層楽しめることは確かだ。

監督は前作に引き続きギレルモ・デル・トロ。「パンズ・ラビリンス」の衝撃もまだ新しい、メキシコ出身の監督だ。ちなみに「パンズ・ラビリンス」は間違いなく傑作なので必見。ゴシック・ビザール調のホラーを得意とする監督だが、その映像の耽美的美しさは他に類を見ない。しかも、しっかりとしたエンタテイメントとして遊びのあるなかで、その映像美を共存させてしまうのだから凄い。
今シリーズも同様で、テンポよく笑いやアクションを織り交ぜつつ、ところどころにハッとするような造形の美しさがある。特にクリーチャーの造形は独特で、何ともいえない不気味さと美しさ、そして愛嬌をそなえ、デル・トロ美のファンならそれだけでお腹いっぱいだろう。トロール市場のシーンなどは、隅々までずっと観ていたいぐらい楽しい。
デル・トロの造形として特筆すべきなのは、あまりCGなどに頼らず、極力特殊メイクでまかなっていることだ。そのため、一昔前の着ぐるみのようなチープさと、生身の人間が演じる生々しさがあり、何とも独特の雰囲気になっている。そもそも主人公のヘルボーイや相方のエイブなど、メインキャラクターが極彩色の特殊メイクバリバリなので、最初観たときは最近珍しいそのチープさに度肝を抜かれるかもしれないが、何故か徐々に慣れていくから不思議だ。ひとつには、全てがそういった雰囲気で統一され隙がないこと、そしてそういった異形のものたちのほうがより人間らしく描かれているからだろう。このへんに、監督の「異形への愛」を感じてならない。(ちなみに「異形への愛」といえばティム・バートンだけど、そっちとはまた違った「異形」感なんだよなー)

また、このシリーズの一番の魅力は、それぞれのキャラクターの強烈な個性だろう。葉巻をくゆらせかっこつけているけど中身は子どもな「子どもおじさん」ヘルボーイと、知的で憎めないエイブ、そしてそんなヘルボーイとの関係を、唯一見た目は普通の人間として育んでゆくリズ。そして、今作から登場する指揮官ヨハン・クラウスのキャラクターもいい。ちなみに自分はヘルボーイ役のロン・パールマンの大ファンなのだけど、この人は本当にハマり役だと思う。体格も顔もそのまんまなんだもの(笑)

最近はアメコミ原作映画のラッシュで、様々なものが映画化され、中には外れもあったりするが、正統派ヒーローものの「スパイダーマン」、リアリティ溢れる暗さでリニューアルされた「バットマン」、これまたリアル系おじさんヒーロー「アイアンマン」、などと比べても、この「ヘルボーイ」はかなり特殊な部類に入るだろう。上記の「スパイダーマン」などのような、いかにもヒーローが大活躍する物語を想像すると、ちょっと拍子抜けしてしまうかもしれない。しかし、どちらかというとファンタジー寄りだと思って、その独特の造形美を堪能すれば満足できることは間違いない。ちなみに、自分はアメコミ原作のヒーローもののなかでは一番好きなシリーズだ。
今作は、オカルト要素を減らしてしまったせいで原作のもつディープな雰囲気がややなくなってしまったのが残念だったが、その代わりデル・トロ節を思う存分堪能できたので大いに満足。それと、ヘルボーイが猫好きな設定のせいで、相変わらず猫がたくさん出てくるのがイチイチ可愛くて嬉しいです(そして驚きの演出も・・・ 笑)。

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ハリー・ポッターとアズカバンの囚人

2009年05月31日 20:34

超有名ファンタジー小説「ハリー・ポッター」シリーズ第3作目の同名映画化作品。
前作、前々作同様、DVDリリース当初に一度観ているのだが、原作を読んだのでまた観た。

今作は前2作のクリス・コロンバスから変わってメキシコ人監督、アルフォンソ・キュアロンが監督している。アルフォンソ・キュアロン!そう、「トゥモロー・ワールド」で度肝を抜かれたあの監督ですよ!今作はこの「トゥモロー・ワールド」の制作資金をつくるために引き受けたらしいのだけど、やっぱりキュアロン節は健在で、前2作とは全く違う趣になっている。ちなみに「トゥモロー・ワールド」はまごうことなき★5個の大傑作なのでこちらも必見。

キュアロンといえば、「トゥモロー・ワールド」での架空の荒廃した近未来世界のリアリティある描き方が絶妙だったのが印象的だが、架空の世界を描くという点ではこの「アズカバンの囚人」もかなり突出している。
物語は今までと同じホグワーツ校を中心に起こるのだが、まず、建物や庭の構造といった美術そのものが全く違う。前2作と同じ場所とは思えないぐらいだ。校舎となる城から広い庭を挟み、禁じられた森の端に建つという設定のハグリッドの小屋の周辺の描写が特に今までと大きく異なり、高低差のあるやや荒廃した雰囲気になっている。それ以外にも、城の周りを取り囲む木々の感じが以前より鬱蒼としており、全体的に薄暗く、魔法・魔術というものがもつ陰鬱な側面の雰囲気を上手く醸し出している。
前2作の明るく健全なファンタジーの雰囲気が好きだった人は、このダークな雰囲気に少々面食らうかもしれない。好き嫌いは分かれると思うが、自分はかなり好みだった。

物語はホグワーツ3年生(13歳)となったハリーのもとに、アズカバンと呼ばれる魔法界の監獄から脱走した凶悪犯シリウス・ブラックがハリーを探しているという噂が飛び込んでくるところから始まる。それに合わせてホグワーツにディメンター(吸魂鬼)という恐ろしい怪物が配置され、シリウスからハリーを守るため警護にあたるのだが・・・。

脱獄したシリウスを始め、今後の物語に大きく関わる重要人物たちが次々登場し、ハリー・ポッターの壮大な物語もようやく本筋に入ってきたというところ。原作は約650ページ(携帯版)と、500ページ前後だった前2作よりスケールアップしており、そのぶん緻密に構成されたストーリーはシリーズ中でも定評のある完成度。クライマックスの「あの」展開などはユニークで、面白い。ただし、原作はスケールアップしていても、映画の尺はあまり変わらないので、大幅に削減されていることは否めない。しかも、今作から、今後の展開に関わってくる伏線や細かな設定などが登場するので、そういった要素がやや削られすぎている感はある。これは限られた時間しかない映画では仕方のないことだろうが、物語に魅力を感じた人はここいらで是非原作に手を出して欲しいところ。原作を読めば、より細かい設定や伏線~回収がわかり、さらに深く物語を楽しめること受けあい。

ただ、やはり監督が変わるとこうも変わるのかというのが些細なディテールの描写の仕方。新学期が始まるときの合唱シーンや、寝室でハリーやロンたちがふざけているシーンなど、原作にはない描写が随所に差し込まれ、ハリーたちの生活にリアリティを与えている。ストーリーに直接関係がなくとも、こういった細やかな演出というのが本来の映画のもつ面白みであり、同時に物語にのめりこませる大きな役割を担っているのは確か。やはりその辺りはさすがキュアロン、今までと少し違った着眼点が大いに生かされている。
また、ディメンターの造形や登場時の演出も見事。「忍びの地図」のデザインや、それを生かしたエンドクレジットも洒落ていて、長いエンドクレジットをつい最後まで観てしまった。

そして何より、シリウス・ブラック役にゲイリー・オールドマン!ゲイリー!大好きです。適役です。最近はバットマンの補佐っぽい冴えない刑事だったりしてますが、やっぱりゲイリーはこういうチョイ悪っぽい役が最高!なんたってシド・ビシャスですからね・・・(※昔「シド・アンド・ナンシー」という映画でセックス・ピストルズのシド・ビシャス役を演じてた)。自分にとっては今でもゲイリー=シドなのであります。
そして今作からダンブルドア校長先生がマイケル・ガンボンに。前2作で演じていたリチャード・ハリスが亡くなってしまったからなんですが、この人、「コックと泥棒、その妻と愛人」(←自分が超大好きな映画)の泥棒役の人なんですよねー。その映画では極悪人を演じていたので、なんだか違和感が・・・。なんていうか、怖い?(笑) まあ、「コックと泥棒~」の役どころのほうがこの人にとっては変化球だったのだろうと思われるので、いいんですけどね。もちろんまごうことなき名優です。

次作「炎のゴブレット」以降はまた違う監督に変わってしまうのだけど、理想を言えばずっとキュアロンに監督して欲しかった。やっぱり、いくら原作が有名でよくできているからといっても、映画にする際は監督次第で大きく変わると実感。もちろんそのプレッシャーもすさまじいものだろうけど、もうちょっと監督のチョイスは洗練して欲しいなあとつくづく思った一作。

(同シリーズの別の記事)
ハリー・ポッターと賢者の石
ハリー・ポッターと秘密の部屋
ハリー・ポッターと謎のプリンス

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ハリー・ポッターと秘密の部屋

2009年05月10日 22:41

超有名ファンタジー小説「ハリー・ポッター」シリーズ第2作目の同名映画化作品。
前作同様、DVDリリース当初に一度観ているのだが、原作を読んだのでまた観た。

前作「賢者の石」から立て続けに観ると、俳優陣の成長っぷり(特にハリーたち子どもの)にどうしても目が行ってしまう。映画のリリースもだいたい一年間隔ぐらいだと思ったのだが、こんなに成長してしまうものなのか。12歳の設定にしては既に青年っぽい面影も出てきており、欧米人は発育がいいなーとつくづく思ったり。もちろん話も前作の続きとなるので、サザエさん的な、いつまでも成長しないようなものではないので内容的には問題はない。

11歳の誕生日に、自分が魔法使いであるとわかり、ホグワーツ魔法学校に入学したハリー。怒涛の一年を終えて、再び夏休みに意地悪なおじさん一家の住む家へと帰るところまでが前作の流れ。今作は、もうすぐホグワーツ2年目(2年生)を迎えるハリーの元へ、屋敷しもべ妖精のドビーがやってくるところから始まる。「今学期、ハリー・ポッターは学校へ戻ってはいけません」と告げ、ハリーをなんとかおじさんの家に留まらせようとするドビー。その制止を振り切って、再びホグワーツへやってきたハリーだが、校内で生徒が次々に襲われるという謎の事件が巻き起こる。

説明的で、単調な前作に比べれば、おおまかな概要は前作で既に説明し終わっているということもあり、学校を揺るがす大きなトラブル発生というスケールアップしたストーリーとともに、ハラハラドキドキ感を味わえる。前作のような冒険要素は少ないが、その代わりミステリアスな謎とき要素が豊富。前作を10分上回る、2時間40分という途方もない長尺にしては、飽きずに最後まで楽しめる(それでも長いけど)。
ただ、やはり、前作同様物語を語ることにいっぱいいっぱいで、こちらに考える隙を与えずどんどんお話が進んでいってしまうのは残念。せっかく様々な謎と伏線が張り巡らされているのに、ストーリーの進行のペースが早いため、色々想像する暇もなく答えが次々に明かされてしまい、気がつけば終わっているといった感じ。ただ、それでも、おおまかな説明が済んでいるぶんストーリーに重心を置けるので、前作よりはまだましだろう。

また、当たり前だが特撮も前作より若干スケールアップ。校内の些細な描写なども増えているので、ファンには嬉しいかぎり。迫力あるシーンも前作より多いように感じた。

次作「アズカバンの囚人」からいよいよ本筋とも言える物語が始まり、重要な登場人物が登場したりと、雰囲気がガラッと変わるので、お子様向け明るいファンタジーはここまでといった感じ。また、次作から原作のボリュームも増大し、そのため原作から削られる要素も多くなるので、原作にほぼ忠実に、一話完結な体裁をとれているのもここまでと言えよう。ここまででそのお子様テイストにウンザリな方は、是非次作を観てみてください。なんたってあのアルフォンソ・キュアロンだからね!

ここまでのシリーズ好きな順:秘密の部屋(2)>賢者の石(1)

(同シリーズの別の記事)
ハリー・ポッターと賢者の石
ハリーポッターとアズカバンの囚人
ハリー・ポッターと謎のプリンス

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ハリー・ポッターと賢者の石

2009年05月07日 02:06

今や誰もが知っているファンタジー小説「ハリー・ポッター」シリーズ第1作目の映画化作品。

もちろん以前、DVDがレンタル開始した直後に一度観ているのだが(レンタル開始が2002年だからもう7年前?)、ちょうど今、原作にハマってしまい次々に読破している最中だったので、復習というかビジュアルイメージが観たくなってもう一度観た。ちなみに原作は第5作目「不死鳥の騎士団」の終盤まで読んだところ。映画も第5作目「不死鳥の騎士団」まで公開済みで、今夏に第6作目「謎のプリンス」が公開される。シリーズは全7作で原作は既に完結済みだ。

以前、初めてこの映画を観たときは、それなりに面白いけれどよくわからない印象の薄さがあった。もちろん現代の(当時の)VFX技術でこそ表現可能になった魔法世界を描いた美術は素晴らしかったし、杖を使って呪文を唱えることで魔法をかけたり、箒にまたがって空を飛んだりと、王道過ぎるほど王道なファンタジー要素を、実写で違和感なく観られることは、子ども時代に帰ったかのようななんとも言えないわくわく感を感じることができて楽しかった。ただ、ちょうど当時競うように公開されていた「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのほうが圧倒的に魅力的で、タイミングが重なってしまったためそれと比較してしまったせいもあるのかもしれない。それでも、たとえ「ロード・オブ・ザ・リング」がなかったとしても拭えない印象の薄さがあり、それなりに面白いのに何故なんだろうとずっと思っていた。

原作を読んだ今再び観ると、以前何故ピンとこなかったのかがよくわかった。まず、原作は1年間という、かなり長期にわたる物語であり、そんな大ボリュームの原作で起こる出来事を、2時間半という限られた映画時間内(それでも長過ぎだけど)でかなり忠実に追っているため、物語が平坦で、盛り上がりに欠けるのだ。小説での盛り上がりに割くボリューム(ページ数)と、映画での盛り上がりに割くボリューム(時間)は一致するはずがないのに、映画は原作とほぼ同じペースで進行している。これはあんまりよろしくない。けれど、様々な目新しい出来事がひっきりなしに起こるので、それを次々に追う慌しさで、観ていて退屈かと聞かれればそうでもない。結果、「面白いけど印象が薄い」という、自分の初見のときのような感想が出来上がるのだ。

この感じは自分が「スター・ウォーズ」シリーズを観たときの感じと似ていた。「スター・ウォーズ」もマニアックなファンが山といる大人気シリーズだが、個人的には何故か大して興味がなかったので、昔の3部作すら観ていなかった。比較的最近になって(新3部作がつくられたあと)、それじゃイカン、一応観ておこうと思い立ち、過去3部作を観てみたのだった。そのときも、面白いけどイマイチ乗り切れず、何故これがこんなに人気があるのか結局よくわからなかった。まあ、壮大な舞台設定とか宇宙船とかそういうSFガジェットがよろしいんだろうなーと他人事に感じたぐらい。(ちなみに自分はトランスフォーマーとかエイリアンのフィギュアは涎垂らして欲しがるタイプですが、スター・ウォーズのフィギュアは何故かたいして興味を持てませんでした。きっと趣味の問題)
そのとき感じたのは、「スター・ウォーズ」シリーズも物語が平坦だということ。宇宙船での戦闘シーンがあったり、惑星での戦いがあったりと、迫力あるシーン満載なのに、なんだか淡々としている。これは何故だろうと考えたとき、物語が人物の感情を主軸にして動いているわけではないからだと気付いた。普通、映画は主人公や各登場人物の感情にのっとって動いてゆく。そのため各登場人物に観客が感情移入することで、一緒に悲しんだり喜んだりでき、映画の世界に没頭することができる。
けれど、「スター・ウォーズ」に関して言えば、どうやらルーカス監督にとっては各人物は駒のようなものであり、その壮大な世界観を余さず描ききることのほうが重要らしい。結果、映画は絵巻物のようになってしまい、観ている側は客観的な視線でその壮大な絵巻物を眺めているような感覚になる。それは決して退屈ではないが、いまいち乗り切れないという状況をもつくり出すことになってしまう。登場人物誰にも、主人公にさえ感情移入できないようにつくられてしまっているのだから当たり前だ。

「ハリー・ポッター」が「スター・ウォーズ」より幸運だったのは、原作がしっかりした小説で存在するということ。原作は次々起こる出来事の合間に揺れ動く、その年齢なりのハリーたちの感情がしっかり描き込まれており、物語は決して俯瞰目線ではない。むしろ、どんどん惹き込まれていってしまうぐらいの、キャラクターの魅力がある。それは、やっぱり全世界で大ヒットしたのも頷けると思った。ただ、映画の失敗点は、その「全世界大ヒット」のプレッシャーからか原作者の要請か知らないが、あまりにも原作に忠実に描きすぎて、ハリーたち魅力的な登場人物の描写が疎かになっているということだ。
原作はむしろ、そういった数多くの登場人物たちの感情の流れと交流でできていると言ってもいいのに(そのへんがきっとテーマ)、そこをおざなりにしてしまったら原作の魅力はサッパリ味わえない。起きる出来事をとにかく描くだけでは、飽きはしなくとも誰かに乗り移って映画を堪能することもできないのだ。原作の大ボリュームを映画化する苦労は相当なものだろうが、時には大胆に削ったり改変し、より「映画として」面白いものにしてゆく努力は必要だと思う。繰り返すが、映画としてのテンポと小説としてのテンポは全く違う。

原作があるから幸運だというのは、原作を読めばかなりの部分が補完でき、それによって映画をもっと楽しむことが可能だということ。原作を読んでイメージしたものと映画とのギャップやマッチ具合を楽しんだり、映画を原作の挿絵的感覚で利用したりすることができるということ。
もちろん原作を読んでなくてもそれなりに楽しめることは楽しめるが(特に子どもには良いと思う)、その場合は続きものだということをしっかり認識して観たほうがいい。これはあくまでシリーズもので、話は伏線が絡み合って意外とややこしく、第7作、つまり最終話で、ようやく全てが結末するという心づもりで観ないと、本当には楽しめない。そのわりには一話完結っぽい雰囲気を醸し出しちゃってるのが問題だけど。
ちなみに、主人公ハリーが通う魔法学校ホグワーツは7年制で、原作も7作完結である。つまり、1作ごとにハリーは1年生、2年生、と学年が上がってゆき、物語は毎回夏休み(イギリスだから夏休みが学年の変わり目)~新しい学年の開始(9月)~新しい学年の終わり(6月末)という流れになっている。これに自分は原作を読んで初めて気が付いた。そういった細かい設定や、その世界ならではの用語をしっかり頭に叩き込む必要があるのも注意。意外とボケーっとは観ていられないのだ(特に自分のように、カタカナ言葉や人名が覚えられない人)。

なんだか「ハリー・ポッター」シリーズそのものの話になってしまったが、今作の「賢者の石」は第1作目ということで、様々な登場人物や今後お馴染みとなってゆく舞台の説明が多く、ハリーは11歳と完全に子どもだし、魔法学校には入学したばかりで大して魔法は使えないし、どうしても子ども向け感は否めない。ただ、今後(ハリーの成長に従って)かなり大人なテイストに発展してゆきますので、途中から観るよりはこの第1作から観たほうが絶対いい。というか、そうしないとわけがわからなくなると思う。物語の本編というか、本当の主軸が動き出すのはまだこれから。これは序章だと割り切って観るべき。ただし、ハーマイオニー・グレンジャー役のエマ・ワトソンは本当可愛いです!

(同シリーズの別の記事)
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