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スラムドッグ$ミリオネア

2009年04月25日 00:09

スラム育ちの野良犬=スラムドッグの青年、ジャマールが、クイズ番組「クイズ$ミリオネア」で最後の一問に答えようとしていた。正解すれば賞金は2000万ルピー。かつて、医者や弁護士でもここまで勝ち残れなかった問題を、何故、スラム出身の青年が答えることができたのか。ジャマールの、決して幸福とは言えない半生と、彼を取り巻く人々ー兄のサリームや幼馴染みのラティカとの交流を描きつつ、煌くインドでの答えを探る旅へ、いつしか観客は誘われてゆく。

先日のアカデミー賞を、最優秀賞である作品賞をはじめ総ナメにしたことで一躍有名になった本作。アカデミー賞をとっていなかったら、日本ではミニシアター公開止まりになっていたとしか思えないのは、その日本公開の遅さからも窺える。アカデミー受賞なとたん全国一斉公開ですかそうですか・・・ そして初日には人がいっぱい押しかけるってわけですかそうですか。なんともわかりやすい話ですね。と、皮肉はここまでにして。

監督はダニー・ボイル。れっきとしたイギリス人の、ぶっちゃけ変人な監督である。自分の世代ではダニー・ボイルといえば「トレインスポッティング」で一世を風靡して、テーマソングだったアンダーワールドの曲が大流行りしたのが印象深いが、そのあとも「ザ・ビーチ」「28日後・・・」「サンシャイン2057」など、様々な作品を撮り続けている。特に、特徴的なのが、撮る映画撮る映画どれも全く違うジャンルをつくることで、「トレインスポッティング」が青春ものなら「28日後・・・」はゾンビ(?)ホラーだし、「サンシャイン2057」はSFだ。しかも付け加えると、当たり外れが激しい。まあ、この点は人それぞれの好みにもよるが。
ともあれ、そういった撮る映画の傾向が、一言で言えば不可思議なので、「変人」と最初に書いた。そして、先日のアカデミー賞授賞式の光景を見て納得した。意外といい年したオジサンなのだが、受賞して舞台に大勢のキャスト・スタッフとともに上がった姿ははしゃいでいて、キラキラした「映画大好きな子ども」の目をしていた。例えるならタランティーノに似ている。そうか、この人、映画が好きで好きでたまらないのね。それで、愛を込めて「変人」呼ばわりすることに勝手に決めました。

自分はダニー・ボイルの作品は「トレインスポッティング」以降、特に好きでも嫌いでもなかったのだが、「28日後・・・」でかなり好きになった。無人のロンドンの描写にぐっときた。なんと言えばいいのかわからないが、無言で乾いた感じで、それでいて叙情的な情景を描くのがどえらく上手い人だと思った。そして、今作はそのダニー・ボイルの持ち味が最大限に引き出されている。

インドのスラム生まれの青年が、「クイズ$ミリオネア」に出演して大金を得るまでを描く、ストーリーは至ってシンプルだ。だが、インドの光と風が、この物語に過剰なまでの生命力を吹き込んでいる。テーマは「生きること」。ストーリーと同じぐらいシンプルで、だからこそ説得力がある。ジャマールがクイズに解答するにあたって、その答えにどんな出来事が込められていたか、過去を探るように描き出されるエピソードは時に過酷で残酷だ。だが、どんなときも生きることに対して立ち止まらず、走り続ける疾走感が、その暗い出来事を吹き飛ばして希望という光と風をもたらす。生命というものがかくもしぶとく、エネルギッシュであることがストレートすぎるほどストレートに伝わってきて、心地よい。

粒子が粗く、揺れまくるカメラも、インドの情景を切り取り、物語の疾走感を後押しするのにぴったりだ。また、随所で挿入される音楽とそのタイミングが絶妙で、やっぱりダニー・ボイルは音楽の使い方が半端なく上手いなあとつくづく思った。久々に映画のサントラを買ってしまったくらい。しかも鑑賞直後というタイミングで買ったのは初めてかも。インド音楽と電子音が融合されて、なんとも言えない世界観の音になっている。アジアンやエスニックな音が好きで、かつハウスなどダンスミュージックが好きな人にはかなりオススメ。ちなみにアカデミー作曲賞、主題歌賞も受賞してます。

とにかく上にも書いたようにこの映画を一言で現すなら「疾走感」。そして「煌き」。人生を、生きることを駆け抜け、生命の迸りが煌く、それが見事に映像に描き出されている。漲るようなこの感覚を味わえる映画はなかなかないと断言できる。それを観るだけでも一見の価値があると思うし、アカデミー賞を受賞したのも納得。(それにしてもアカデミー賞って、本当最近趣向がどんどん違ってきたな・・・)
また、一気に走り抜けるストーリーの結末も見事で、ハッピーな気持ちで劇場を去ることができるのは保障する。インド映画をリスペクトしたかのような最後の終わり方も凄くいい。あくまでリアルに、時に過酷な生を描くこの映画だからこそ、なおさら引き立つ粋な演出だ。もちろん音楽も最高。

あくまでシンプルなテーマを、シンプルなストーリーで描いていながら、ちょっとした洒落た演出や細部のこだわりが抜け目ない。そのへんはさすがダニー・ボイルといったところ。何より全てがあくまで映画的で、映画の良さとはこういうもんだ!というものを思う存分詰め込まれているところがいい。映像と音で語り、魅了され、恍惚とする、映画ならではの、映画でしか味わえないその感覚を存分に堪能できる。
暖かくなってきた昨今、気分も浮き足立っているなか、アカデミー賞受賞という理由でもよし、ダニー・ボイルのファンという理由でもよし、インドが好きだからという理由でもよし、自信を持って万人におすすめできる傑作。

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ディスタービア

2009年02月25日 04:50

自宅謹慎になった学生が、興味本位で隣近所を覗き見しているうちに、見てはいけないものを見てしまって・・・という、現代版ヒッチコックの「裏窓」風サスペンス。

おバカ学生(ありがち)がトラブルに巻き込まれちゃってどうしよう!(ありがち、でも大好き)という典型の設定かと思えば、冒頭は意外なほどシリアスな雰囲気で始まりちょっと面食らう(いい意味で)。主人公の学生が、ただのバカ学生ではなく、ちょっとした家庭内の確執を抱えているという、ありがちな設定にプラスアルファの深みを持たせているところは好感が持てる。主人公やヒロインなど、それぞれ少なからずその年齢相応の悩みを抱えていたり、かと言ってそれが前面に押し出されるわけじゃなく軽快なやりとりがあったり、笑い要素があったりと、ベースとなるサスペンスに加えてそういった細やかな演出に抜け目がないため、テンポ、バランス的に飽きずに最後まで楽しめる。

ヒッチコックの「裏窓」は昔観たけどほとんど覚えてなく(汗)、でも現代の10代の若者が主人公な時点で全く違う作品になっていると思う。ネット、ビデオカメラ、携帯など今どきのテクノロジーが整った環境で、覗き見をするということがいかに容易で、また、現代のプライベートという枠が、いかに境界線が曖昧になっているか、ということをちょっと再認識させられた(メイキングでも言っていたけど)。

ティーン映画らしく、10代の男女の軽いノリのやりとりも多分にあって、個人的にそういうのが大好きなのでその辺りも満足。
また、キャスティングがかなりいい感じ。主人公は「トランスフォーマー」や「インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国」のシャイア・ラブーフだし(大好き!)、そのお母さんは「マトリックス」のトリニティ役のキャリー・アン・モス(お母さん役がハマり過ぎて最初わからなかった)、ヒロインは可愛いし、主人公の男友達のアジア系の彼もいい感じ(好みかも・・・)。そして疑惑の隣人役のデビッド・モースがかなり良い!優しげなのに異様、という雰囲気が存分に出ていて存在感が抜群。やっぱりキャスティングは大事よね。その映画にどれだけのめり込めるかが全然違ってくる。ちなみに、大好きなシャイアくんは、今まで観たどの作品より一番ハマってたと思う。
それにしても、やっぱりアメリカの若者はXbox360で遊んでいるのね。そしてお母さんがTVのコードぶっち切るところは笑った。そこまでしなくても、トリニティ!

後で知ったのだけどこれの監督って「イーグル・アイ」の監督なんだね・・・。「イーグル・アイ」は駄作でしたがこちらは良作。オススメです。監督、さては脚本のチョイス誤ったな。

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