ミラーズ

2009年07月12日 18:58

元刑事のベンは、ニューヨークのとある建物の夜警として勤務し始める。そこは過去大火災に遭ったデパートで、今もなお当時の状態のまま残っている。ある晩、フロアに印象的に飾られた大鏡に触れたとき、ベンとその家族に悪夢のような出来事が次々と降りかかってゆく・・・。

タイトルそのまんま、鏡モノサスペンスホラー。火災に遭ったデパートに残された鏡の謎を解き明かしつつ、その鏡の中に潜む何者かと対峙してゆくというもの。主演はキーファー・サザーランド。観てないけど「24」で一躍有名になりました。でも個人的にはやっぱり「スタンド・バイ・ミー」の不良なわけで。その頃よりは老けたけど、顔はやっぱり変わらないのね、とか思いつつ。

焼け焦げたデパートの雰囲気やオカルトチックなギミックは、どうしても「サイレントヒル」を彷彿としてしまう。なんだか至るところで似たようなシチュエーションが満載。そのため目新しさ皆無。しかも鏡を使ったホラーだというのに、なんだかイマイチ一貫性がない。詳しく書くとネタバレしまくるので書きませんが、この映画内での「鏡」というものがどういう役割であり、どういう意味を担っているのかの理由づけがその場によってバラバラで、そのためストーリーに統一感が欠けている。「鏡」をテーマにしているからには、そこが一番重要なポイントな筈なのに、そこがバラけていて明確でないため、全体的に矛盾が残る。

タッチやテイスト>「サイレントヒル」のパクりっぽい
ストーリー>矛盾だらけ
というわけで、結論を言えばイマイチな出来。「鏡」という複雑なモチーフを敢えて使うのならもっと考えるべき。エンディングはそこそこ捻りが効いた演出だが、全体的な骨子が滅茶苦茶なので残念ながら全く引き立ってない。ちょっと違うがパラレルワールドものホラーで言えば、前述の「サイレントヒル」や「エルム街の悪夢」のほうがよっぽどよくできていた。

唯一斬新だったのは、某登場人物の殺され方。あれはなかなかショッキングでした。でもよく考えたら、誰かが殺されるシーンってあれともう一箇所しかないのか。ちょっと少なすぎない?(ホラーにしては)

そういうわけで、少ないけれどもグロ描写はがっつりあるのでグロ苦手な人は注意。
ただ、全体的なテンポや映像は特に問題ないので、矛盾さえ気にならなければ、そこそこ楽しめるかかもしれません。作品としてはかなり致命的な矛盾ではありますが。まあ、「ショッキングな殺されシーン」がどうしても観たい人じゃなければ、他にもっと良作ホラーはあるので、個人的にはそちらを鑑賞することをオススメします。

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デビルズ・バックボーン

2009年06月03日 00:24

先日観た「ヘルボーイ ゴールデン・アーミー」に引き続きギレルモ・デル・トロ作品。そういえば観てなかったので。2001年製作のスペイン映画。

1930年代スペイン内戦下、人里離れた荒野に建つ孤児院に、一人の少年がやってきた。彼の名はカルロス。内戦で両親が戦死したのでここへと連れて来られたのだった。到着したその夜から、怪しげな声や人影を見るカルロス。どうやらこの孤児院には幽霊が出るという噂が。そして、彼のあてがわれた12番ベッドをかつて使っていたという、サンティという少年とは・・・。

「パンズ・ラビリンス」と同様、スペイン内戦下を舞台にした、ギレルモ・デル・トロ作品のなかではシビアな系統に入るストーリー。どうやらデル・トロって、「ミミック」や「ヘルボーイ」のような、軽快なアクションに持ち味のビザールさを潜り込ませたエンタメ路線と、今作や「パンズ・ラビリンス」のような、重い現実をファンタジーと融合させた、シリアス路線の二つの路線があるようだ。自分は「パンズ・ラビリンス」で一気にヤラれたクチなので、こういったタッチのほうが好き。なので、大変満足でした。デル・トロ作品のなかでは「パンズ・ラビリンス」に並ぶぐらい好きかも。もちろん「ヘルボーイ」も好きだけどね。

お話は一言で言ってしまえば幽霊ものなのだけど、普通のホラーと思って観ると拍子抜けしてしまうだろう。メイキングで監督自ら語っているとおり、本作はファンタジーであり、そしてそのファンタジーを引き立たせるような重厚な人間ドラマが一番の主軸なのだ。怖いというよりは、悲しい。そんな趣は、後に「パンズ・ラビリンス」を撮る監督の、一貫した主張を伺わせる。「デビルズ・バックボーン」という、いかにもなタイトルに惑わされるなかれ。

ファンタジーとは何なのか、という、「パンズ・ラビリンス」で突きつけられた主張がこの映画にも込められている。過酷な戦時下、しかし、その戦争は大人たちが起こしたもので、子どもたちはいつもその犠牲となり、振り回されている。そんな汚い大人の思惑と、純粋がゆえにそれへと立ち向かう強さを持つ子どもたち。それは、手段や状況こそ違えど「パンズ・ラビリンス」の主人公の少女と同じだ。そして、物語は「パンズ・ラビリンス」とは対称的な終わり方を迎える。まるで対になった物語のように。
デル・トロの凄いところは、その過酷な現実への、ファンタジーという非現実的要素の絡ませ方だ。ファンタジーとは時として明るく楽しいものばかりではない、そしてそのファンタジーを生み出すものも結局は人間であるということ。そして現実を動かすのも、結局は人間の感情以外の何者でもないということ。幽霊は、そこにいるけれども、何かを起こしているのは結局人間なのだ。
そういった大人のエゴが存分に描写され、それと対称的に子どもたちの純粋さが引き立っている。この監督は子どもの描き方が上手いなあとつくづく感じた。そして、その周りを取り巻く大人たちのドラマも奥深い。

全体的に地味なお話だが、それでもデル・トロっぽい美術の秀逸さは健在。まず、何と言っても幽霊の表現がいい。そして、タイトルにもなったホルマリン漬けのアレとか、義足の院長など、不穏さを掻きたてるガジェットも豊富だ。メイキングを観ると、ここでも極力CGを使わずアナログでつくり上げているらしく、デザインまで監督自ら手がけているとのこと。そういったセンスがあればこそ、この重厚なファンタジーにも説得力が生まれているのだろう。

ただのホラーと侮るなかれ。ホラーやファンタジーと綿密に絡み合わせた、現実の過酷さを描く、悲しい人間模様を描くドラマだ。

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ダイアリー・オブ・ザ・デッド

2009年04月28日 00:15

個人的に超敬愛というか崇拝してやまないゾンビ映画界の巨匠、ジョージ・A・ロメロ監督のライフワーク、ゾンビ黙示録シリーズ(と勝手に命名)待望も待望の第5弾。そんなわけでもちろん劇場公開時に観たんですが、DVDがレンタル開始したので再度観ました。うーん、何度観ても考えさせられる!最高!!

このロメロ監督のゾンビ黙示録シリーズとは、1968年に公開されカルト映画として熱狂的ファンを獲得した「ナイド・オブ・リビングデッド」から始まり、1978年の「ゾンビ(原題:Dawn of the Dead)」、1985年の「死霊のえじき(原題:Day of the Dead)」とほぼ10年おきというペースで続き、更に20年という時を経てようやく2005年、待望の第4作目「ランド・オブ・ザ・デッド」が公開された。それにつづく第5作目が本作「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」ということになる。この驚異的な長さの制作ペースから、今作の公開が、ファンにとってどれだけ待望のものだったかということがおわかり頂けるかと思う。(まあ、前作から今作までは3年程のスパンしかなかったけど)
また、現在既に1ジャンルとして確立された「ゾンビ映画」のセオリー、基盤を最初につくったのもロメロである。「ゾンビ」という言葉そのものを一般化させたのもこの人だ。

そんな「ゾンビ映画界」の頂点に君臨する(←大げさ?)監督の最新作。ちょうどつい最近、そのロメロの「死霊のえじき」のリメイクと謳った「デイ・オブ・ザ・デッド」を観たところだった。この「デイ・オブ・ザ・デッド」も、リメイクと言うにはほど遠いとはいえ、B級ホラーとしてそれなりの出来だった。でも、やはり同じ題材「ゾンビ」を扱うにしても、ロメロ作品は格が違う。もう、次元そのものが違うのだ。

過去のゾンビシリーズのタイトルが「ナイト・オブ・リビングデッド」=「ゾンビの夜」→「ドーン・オブ・ザ・デッド」=「ゾンビの夜明け」→「デイ・オブ・ザ・デッド」=「ゾンビの日(?)」→「ランド・オブ・ザ・デッド」=「ゾンビの国(?)」と来ているように、このシリーズは、それぞれのストーリーの直接的なつながりはないものの、被害(死人が蘇る)の規模が徐々に大きくなっていった世界が舞台になっている。1作目で死人が蘇り一軒家に篭城する話、2作目でもっと各地で死人が蘇りショッピングモールに篭城する話、3作目で世界中で死人が蘇り、生存者が地下に篭りゾンビを研究している話、4作目で更に事態が進み、世界中でゾンビがウロついているなか、生存者も頑丈な柵で覆った都市をつくり、ある意味共存している世界を描いている。
つまり、ロメロゾンビ映画の特徴は、そうやって段階を経て、様々なシチュエーションを描きながら、ゾンビ=死者が蘇ることとは何か、もっと言えばその蘇った死者と生きている人間との関係性を、常に鋭く考察していることにある。それゆえ作品には必ず社会的批判を込めた強いメッセージ性があり、その点が他のただの娯楽作品であるゾンビ映画と一線を画している。もはやただのゾンビホラーではなく、社会派作品に近いと言ってもいい。だけどあくまで作品の主体はゾンビ=架空のモンスターで、ホラーというエンタテイメントの体裁は保ちつつ、だからこそその直球とも言えるメッセージが違和感なく浸みとおる。その手腕には脱帽だ。

そんなロメロゾンビ映画のテーマは、常に「人間」。ゾンビという蘇った死者、つまり元は同じ人間だった「もの」と対峙させることで、罪深い人間の業をえぐり出す。今作ではそれに、最近のネットでの個人動画アップロードなどの風潮を含めた「報道」とは何なのかという要素を絡めている。

映画の手法は最近流行りのPOV。「ブレアウィッチプロジェクト」で話題になり、最近何故か「クローバーフィールド」「REC」など、立て続けに同じ手法の作品がつくられている。POVとは、誰かが撮影したという設定の、似非ドキュメンタリータッチの、手持ちカメラで一人称視点の映画のことだ。
「ブレアウィッチ~」も「クローバーフィールド」も「REC」も観たし、それぞれとても面白かったが、今作はそれらのPOVとは一味も二味も違う。まず、撮影者でもある主人公たちが全員大学の映画学科の学生で、そのためある程度撮影の基礎ができていること。また、冒頭にナレーションが入り、これが彼らの手で効果音やBGMなども加えられた、編集済みの作品であるということもわかる。この点は大きい。今までのPOV作品だと、それで、これは結局何なの?という、劇場で観ているこの映画はドキュメンタリーなの?映画なの?という、最後の最後の詰めが曖昧だった。だが、これは冒頭で「作品」であるとはっきり明言しているため、こういうモノがあると最後まで納得できる。最後まで似非「ドキュメンタリ」の体裁が保てているのだ。そして、最大の違いは、POVという設定そのものを作品のテーマと絡ませているということ。この作品ではPOV以外の手法は考えられないし、POVだからこそ、成り立つ作品なのだ。そこが他の作品と格段に違うし、この作品の完成度を大きく上げている。
また、撮影の経験者の撮影という設定や、編集されているという設定のため、通常のブレブレガクガクのPOVより遥かに観やすい。画面酔いしやすい人もこれなら安心だ。

物語は突然死者が蘇り、人を襲い始めるニュース映像から始まる。卒業課題のホラー映画を撮影していた主人公ジェイソンら一行は、何が起こったのかわけがわからないまま、仲間のトレーラーで学校を離れるのだが・・・。
何が起こったかわけがわからないまま、ただ「家に帰りたい」という心境、ゾンビを人だと思いトレーラーで撥ねてしまったときのショック、そういった彼らの心情はとても丁寧に描かれ、POVということも手伝ってあっという間にその世界に観客ははまり込んでしまう。昨今のゾンビ映画は、それが既にジャンル化しているせいもあり、観客側も、つくり手側さえも「死者が蘇り人を襲う」ということを当然のように受け流している作品が殆どなのに対し、その変移の過程をしっかりと描いているのはさすがロメロといった感じ。
そして、その変化をきっちり描くことで、人間のエゴとも言える部分をあからさまにしている。最初はゾンビを撃つことに抵抗があった彼らが、徐々にそれに慣れてゆき、なんとも思わなくなる。残酷だと思われた行為に、徐々に麻痺していく感覚。そしてそれは銃をカメラに置き換え、撮影し、レンズを通して全てを観ることで「傍観者」となることをも痛烈に批判している。英語で「Shoot」は銃を撃つことと撮影すること、両方を意味しているところも興味深い。

今回2度目に観ていて気付いたのは、途中でカメラが2台になり、俗に言う「2カメ」状態になるのだが、主人公で常に撮影し続けるジェイソンを除く1台を、彼らのメンバーの別の1人が撮影することになる。その際に、最初カメラを渡され嫌々だった彼らが、徐々に積極的に撮影するようになるということ。当初撮影を続けるジェイソンに批判的だったメンバーですら、カメラを渡され最後には回し続けるようになる。
これは、カメラの魔力だと思った。嫌なのに押し付けられ、嫌々レンズを覗く。すると、その途端「傍観者」になれる。傍観者は楽だ。目の前で起こっている残酷な出来事も、レンズ越しになら「消費」するだけでいられるのだから。人間の本能とも言えるレベルでの自己防衛なのか、レンズを覗くことそのものに宿る魔力なのか、カメラを渡されたら、覗かずにはいられない・・・。その感覚が、痛いほど伝わってきた。残酷なことに直面するとき、自分の身をどうやって守るのか。それは奥深いところで、カメラを向けることと銃を向けることが繋がっているような気がして、ただ、恐ろしい。だって、カメラを向けることも銃を撃つことも、その相手は「対象」に過ぎないのだから。

そんなわけで、初めて観たとき、その直截的過ぎる台詞の連発などで、一番に感じたのは「自主映画っぽい」だった。もういい年したおじいちゃんで巨匠なロメロが撮ったとは思えない、悪く言えば青臭いような、斬新な何かがたっぷり匂っていた。だけど、やっぱり学生の自主映画では到底つくれないような完成度がこの映画にはある。そのずば抜けたバランス感覚はすさまじい。ゾンビ黙示録5作目にて、処女作のような密度と新鮮さが詰まっている。
もちろん「あの」おじさんとか、あんなところでポロリとか、そして冒頭の「足もげる!」発言など、ニヤリとさせられる演出もいっぱい詰まってます。やっぱ死人は走っちゃいけないよねー。ただのゾンビ映画とかただのPOV映画だと思ってちょっとナメてる人は是非観てください。度肝を抜かれること受けあいのまごうことなき大傑作。
それにしてもジャケットダサすぎてげんなり・・・。ジャケットに惑わされないように!

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デイ・オブ・ザ・デッド

2009年04月24日 00:11

ゾンビ映画の超巨匠であり、個人的にめっちゃ崇拝しているジョージ・A・ロメロのゾンビ黙示録シリーズ(と勝手に命名)第3作「死霊のえじき(原題:デイ・オブ・ザ・デッド)」のリメイクと銘打ったB級ゾンビ映画。と言ってもこの手のリメイク作品にありがちな、原作の持ち味は何にも残されていない全くの別物。ただし、ロメロ映画のリメイクだなどと肩肘張らずに、素直にただのゾンビ映画だと思えば結構良い出来。駄作まみれのゾンビ映画業界のなかではかなり面白いほう。

田舎町に検疫隔離演習という名目で州兵がやってきて、町を封鎖してしまう。ちょうどその頃、町中で風邪のような症状が頻発していた。主人公の州兵、サラは、町に住む母親も風邪のような症状で苦しんでいると聞き、病院へ連れてゆくが、次々と人々がゾンビ化してしまい、仲間と共に町を脱出しようとする。

ストーリーはありがちなゾンビ映画そのもの。冒頭のタイトルバックの演出がダサすぎて開始早々やや心配になったが、案外テンポよく進むうえ、いかにもなB級テイストの軽さが上手く出ており、最後まで飽きずに楽しめた。ロメロ映画=しっかりとしたテーマ性、みたいな期待と先入観を持たずに、ただのB級ゾンビ映画と割り切って観るべし。ロメロのことは忘れましょう(ファンの方へ)。

この映画で特筆すべきはゾンビの素早さ。「28日後・・・」や「ドーン・オブ・ザ・デッド」でも超速ゾンビが登場したが、その比じゃない。なんかゾンビというより別のクリーチャーのような超人的な俊敏さ。天井にも張り付いちゃいます。もはやゾンビではない・・・(別に悪い意味ではなく)。また、感染者がゾンビに移行する速度も結構速い。これは「28日後・・・」もそうだったけど。
また、ゾンビ化しても生きていた頃の知能や性質が若干残っているという設定が目新しい。ベジタリアンのゾンビはゾンビ化しても肉を食べない(=人を襲わない)し、研究者のゾンビは狡猾で手強い。

原作「死霊のえじき」との共通点は、そういった「ゾンビに知能が残ってる」という設定(原作でいうバブくん)と、軍人が出て来るぐらいしかない。タイトルバックでご丁寧にも「BACED STORY BY...」とでかでかと紹介されていたが、その意味あんのか、ぐらい。これなら全くの別物としてつくったほうが良かったのでは・・・。まあ集客とかに関係あるのかもしれないので、あんまり突っ込みませんけど。

主人公が可愛いのと、テンポのいい展開、ありがちだがスッキリ終わる結末で、全体的にそれなりに面白い出来。ゾンビ映画やB級ホラーが観たい気分のときには是非どうぞ。気軽に楽しめます。
ゾンビの素早さや町中のシチュエーション(町の造形など)が妙にゲーム「Left 4 Dead」に似ていたため、それをつい思い出してしまった。実際にその状況を体感できるという意味ではやっぱりゲームのほうがダントツに怖いなあ。

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ミスト

2009年03月17日 00:44

ホラー小説界の鬼才スティーブン・キングの原作を、「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」などキング原作の映画化では定評のあるフランク・ダラボンが監督したホラー。

田舎町を猛烈な嵐が襲った翌日、人々でごった返すスーパーマーケットに買い出しに来た主人公デイビッド親子。突然外は濃い霧に覆われ、一人の老人が血相を変えてマーケットに駆け込んでくる。「霧の中の何かに襲われた!」騒然とする店内。霧の中にいる「何か」に怯え、人々は濃い霧の立ち込めるなか、マーケットの中から出られなくなってしまう。

最初は、何だかわからないものに翻弄される人々の、サスペンス・スリラー的ものかと思っていたら、「何か」の正体は意外とすぐわかり(わかるというわけではないんだけど、少なくとも姿は見えて)、ああ、なんだ、よくあるB級パニックホラーもの?と思っていたら違かった。とにかく重い。そしてエンディングが悲惨すぎる。とりあえず気分が暗いときにはあまり観ないほうがいいかも。小さな子どもがいる親も観ないほうがいい。親子で観るなんてもってのほか。
もちろんベースとしてはホラーなので、大したことないけど(←個人的には)グロ描写もややあるので、そうゆうのが無理な人はやめておいたほうがいい。本当に大したことないけど(←個人的には)。直截的なグロ描写なんかより、人間の心理描写のほうがよっぽど恐ろしく、リアルに描かれている映画だと自分は感じたから。

衝撃的なラストのせいで、好みは真っ二つに分かれる作品だと思う。本当に嫌いな人は嫌いだろうし、この作品そのものに嫌悪感すら抱くだろう。その気持ちもわからなくもない。まあ、そのほうが正しい感覚だ。ただ、自分は結構好きだった。
この作品のテーマは、ある意味ありがちな「一番怖いのは人間」というふうに受け取られがちだが、自分は「人間の愚かさ」がテーマだと思った。作中に登場するキ○ガイ女(笑)の、聖書を引用した台詞からもそう受け取れる。結局人間は愚かで、自分たちの想像を超える何かに対面したとき、大勢集まっていても大した力も持てず、むしろ自分たちで些細な諍いから潰しあう。ある意味とても救いようのない話だが、その人間の負の部分を存分に描き、そして衝撃のラストシーンで言い切った、その説得力ゆえの映画の力はすさまじい。テーマは暗く、決して迎合できるものではないが、それを描ききったという点ではとても評価したい。その一点が、これを、ただのB級ホラーではなく完成されたひとつの作品へ昇華させている。(まあ原作は巨匠キングではあるけれど、ラストは監督の創作らしいので。しかもキングが絶賛したとか)

また、作中ほぼBGMが皆無で、クローズアップや手持ちカメラを多用したカメラワークはその場の緊迫感や不穏な雰囲気を存分に描き出している。一言で言えば、上手い。そして結構好み。CGはややちゃっちいけど、まあなんとか許容範囲。なんかこの脚本の結末が問題視されて大きいスタジオでつくれず低予算ゆえだからだそうな。まあ、わからなくもないけど、不憫な話・・・。

霧の中から何かがやってくる、といったホラーと言えば、ジョン・カーペンターの「ザ・フォッグ」や、「サイレント・ヒル」なんかが思い浮かぶけど、古典ホラーの「ザ・フォッグ」や、オカルトじみた「サイレント・ヒル」に比べると、こちらはもっとリアル路線な感じ。霧そのものより、その場の人々の感情に重点が置かれている。霧の感じは「サイレント・ヒル」に似てたけど。
後味の悪いラストが嫌で、普通のホラーが観たいなら「サイレント・ヒル」がおすすめ。直截的な描写はあっちのほうがグロいけど!(個人的トラウマシーンあり)

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