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トロピック・サンダー 史上最低の作戦

2009年04月23日 23:00

ベトナム戦争の英雄フィーリーフの自伝「トロピック・サンダー」が映画化されることになり、落ちぶれたスターや演技派俳優、有名コメディアンなど、そうそうたるメンバーがキャスティングされた。だが、撮影開始早々映画は撮影中止の危機に直面してしまい、躍起になった監督(若手の新人)は、なんとか映画を完成させるべく、実際のジャングルへと俳優たちを連れて行って撮影を強行することにする。しかし、そこは麻薬密売組織が暗躍する、本物の戦場だった。

戦争映画を撮影しているクルー(正確には俳優のみ)が実際の戦場に行ってしまいどうしよう・・・という、映画業界が舞台のコメディ。映画撮影の現場が舞台なだけあって、映画業界をモチーフにしたブラックジョークなど、映画好きならニヤリとしてしまう演出が随所にあり、飽きない。ただ、ハリウッド製コメディにありがちな「日本人には笑えない演出(過剰な下ネタ、単純過ぎるギャグなど)」も多いので、大爆笑というわけでもない。自分は、どちらかというと、意図的なギャグシーンより随所のそういった小ネタやディテールのブラックジョーク的演出にニヤリとする感じだった。また、ベトナム戦争映画を撮影している設定なので、「プラトーン」などそのへんの作品を観ているともっと面白いのかもしれない。

白人なのに手術して黒人役になりきったカリスマ俳優カーク・ラザラス(ロバート・ダウニーJr)のキャラクターはユニークで、周囲との絡みなどが面白い。また、カメオ出演のトム・クルーズは必見。エンドクレジットまで全然気付かなかった・・・あんな役もやっちゃうのね。二枚目ヒーローばっかりじゃなくて、もっとああいう役をやってくれたら今より好きになるのに!

ハチャメチャながら最後はちゃんとまとまっており、アメリカン・コメディにアレルギーが出なければそれなりの出来。個人的には観る前に期待し過ぎてしまったため、意外と普通・・・というのが正直な感想。映画撮影現場という、いかにも面白そうなシチュエーションがモチーフだったので、もっとそれを生かした、凝った演出が欲しかったところ。普通のアメリカン・コメディの枠は結局出ることがなく、最後も妙に綺麗にまとまっていたのが残念。もっと滅茶苦茶やって欲しかった。日本人にも受ける笑いの方向で(苦笑)。

また、(わざとらしくはあるが)内臓ビローンとかスプラッター的エグい描写が若干あるので、そういうのが無理な人は気をつけたほうがいいかも。
個人的には冒頭のフェイク予告編が一番面白かった。スパイダーマンのあの人が・・・

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ゾンビーノ

2009年03月15日 02:33

50年代アメリカで、核への脅威と畏敬の念から想像(創造)された、架空の核戦争後のパラレルワールドが舞台。メカのような要素がほぼ皆無なのを除けば、テイストとしてはいわゆるレトロ・フューチャーものである。
核爆発による放射能汚染で、死人が蘇りゾンビと化して歩き回るようになった。人類vsゾンビの、「ゾンビ戦争」が勃発したなか、偉大なるゾムコン社がゾンビにつける首輪を開発。その首輪をつければ、ゾンビの人肉を食べたいという欲求を抑え、従順なペット(というより召使い?)として手なずけることができる。そして世界は隔離された安全な街と、その外のゾーンと呼ばれる危険なエリアとに分断され、人々は街の中でゾンビを飼い(?)ながら平和に暮らしているのだった。

と、のっけからなんだかダイナミックな書き方をしてしまいましたが、これは映画の冒頭で一気に説明されるもので、作品の内容自体は平和な50年代テイスト溢れる街での少年とゾンビの心温まるハートフルストーリーです。ううむ、自分で書いてて意味がわからん。とにかく終始ほのぼのしてます。

この世界ではゾンビを飼うことが一種のステイタスらしく、主人公のいじめられっこ少年ティミーの家にも、見栄っ張りのママ(またキャリー・アン・モス!「ディスタービア」といい、お母さん役ばっかりやり過ぎだから!)のたっての願いでとうとうゾンビがやってきた。ソンビに「ファイド」(この映画の原題)と名づけ、徐々に心通わせるゾンビとティミー。そこに色々ハプニングが起きて・・・。みたいな、もう、至って普通のお話です。そう、普通過ぎる。この物語の大前提である「ゾンビを飼う」という概念を除けば。

この作品の大前提な「ソンビを飼う」という概念はブラックジョークに溢れていてとっても面白い。だけどなんだか物足りない。むしろ若干途中でダレ気味。何故なら、そこを除けば全てがありがちで、容易に想像できる内容でしかないからだ。
随所にゾンビ映画の巨匠、ジョージ・A・ロメロのオマージュのような雰囲気を匂わせたり、ティミーに「ゾンビは生きているの?死んでいるの?」と、思わせぶりな発言をさせていたりするのに、そこに関しての掘り下げは一切ない。せっかく「ゾンビを飼う」という面白い設定をしているにも関わらず、面白いポイントはその設定だけで、内容には全く絡んで来ない。観ていて「これゾンビじゃなくて犬とかでも成立するよね・・・」とか思ってしまった(厳密には成立しないけど)。

例えばロメロのオマージュを匂わせるのなら、ロメロが終始ゾンビ映画のテーマとして掲げる「殺生」について、更に裏返したようなブラックジョークを入れて欲しかったし、ティミーに思わせぶりな発言を冒頭からさせるなら、そこについてのきちんとした答えが欲しい。少年とゾンビが和気藹々としているのは、最初は観ていて面白いが、それだけで終わってしまっては観ているこっちが困ってしまうというもの。せっかく犬ではなくゾンビなのだから、ゾンビならではの観客の裏をかいたような演出が欲しい。でなければ犬と少年の心温まるハートフルストーリーとなんら変わらないではないか。そんなのディズニーに任せとけ。

そもそもこの映画を観るという時点で、相当のゾンビ映画ファンか物好きかに限定されるのだから、その辺りの「コアなファン」のニーズに応えるような内容にしなくては駄目だと思う。内容は至って心温まる普通のお話です、でもゾンビが人を食いちぎるシーンもあります、じゃ、一体どんな観客層が観て楽しめるというのか。自分が単純に「コアなファン」に含まれるせいかもしれないが、とにかく何の仕掛けやどんでん返しもなく、全てが予想通りの範疇のまま終わったときには、正直ガックリきた。設定が興味深いだけに残念だ。

本当のブラックジョークやしょうもなさ、くだらなさから来る面白さというのは、つくり手側の本気度で変わってくると思う。つくり手側が本気でやっている熱が伝わって来れば来るほど、「こいつこんなしょうもねーことに本気だよ」みたいな面白さが、自然と伝わってきて笑えるというもの。今作にはそれが足りない気がする。設定が既に面白いから、あとは普通にやってても面白いよね、という、悪く言えば手抜き感が伝わってきて、結果としてあまり笑えるシーンもない。もう少し工夫や観客に向けてのサービス心があればずっと良くなっただろうに。もったいない作品。

ちなみに、ゲームの話ですが最近までやっていた「Fallout 3」というゲームの設定が、この映画の設定と酷似していて(ゾンビではなく、50年代アメリカテイストの核戦争後の崩壊した世界という点)、冒頭のゾムコン社のプロモーションムービーなんかこのゲームのトレイラーとテイストがソックリで、なんだか最初そのゲームのことばかり考えてしまった。そっちは完全なレトロフューチャーもので、放射能入りのコーラ的飲み物「ヌカ・コーラ」(ヌカ=ニューク=放射能)が出て来たりと、ブラックジョークという点では完全に上を行っていた。まあゲームと映画は違いますけど。興味がある方は公式サイトの「映像」から「予告編ムービー Part2」というやつを観てみるとよろし。

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